第139章 観客は帰った、もう演じるな

翌日。何日も徹夜が続いた長谷川栞は、見事に遅刻した。

車で会社の駐車場に滑り込み、無意識に隣をちらりと見る。けれど、あの見慣れたカリナンは停まっていない。

――待ちきれずに帰った?

それとも、最初から来てない?

胸の奥でそんなことを呟いてしまい、栞は自分の思考に気づいた瞬間、さっと血の気が引いた。

……私、ここまで彼に依存してるの?

そう思えば思うほど顔色が悪くなり、栞は足早にエレベーターへ乗り込む。オフィスに上がるなり高野咲子を呼び、直近の案件資料を全部持って来させた。仕事で頭を麻痺させるつもりだった。

ところが、目を通し始めて三十分も経たないうちに、スマホが震えた。中尾美希...

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